2025年4月30日 10 分で読めます

World ID手数料の導入

淡いターコイズの背景に、紫色の四角形が配置された抽象的なパターン。

World財団は、World IDプロトコルを拡張し、WLDによるWorld ID手数料を導入します。エンドユーザーによる利用は引き続き無料のままですが、World IDのサービスを利用するアプリケーションには料金が発生します。各本人確認情報発行者は自身の本人確認情報手数料自由に設定し、その収益を受け取ることができます。また、別途発生するプロトコル手数料はプロトコル自体に還元されます。

歯車のアイコンの周囲に円形の矢印が配置されたイラスト。プロセスやシステムの循環を象徴 2つの青いOrbがサイクルの両端に配置されており、相互作用や継続的な動作を示唆

World ID:AIの時代における人間であることの証明

Worldは、AI時代においてすべての人が恩恵を受けられるよう、実在する人間のネットワークを構築しています。現在、2600万人がすでにWorld Networkに参加しており、そのうち1230万人がOrbによる認証済みのWorld IDを取得しています。認証済みユーザーのネットワークは急速に拡大しており、現在は23か国で1,500台以上のOrbが稼働し、人間であることの認証を行っています。

World IDは、プライバシーを保護しながらグローバルなアイデンティティネットワークを実現するためのプロトコルです。その中核となるのが、Orbによって発行される人間であることの証明認証情報です。また、将来的なWorld IDプロトコルでは、企業や政府機関などのさまざまな主体が新しいWorld ID本人確認情報(例: 信用情報や大学の修了証明など)を発行できるようになります。個人はそれらを自身のWorld IDに紐づけて利用できるようになります。

World IDを利用すると、実際の身元を明かすことなく、自分に関する情報を証明できます。例えば、Orbで認証されたユーザーは、アプリケーション(リライングパーティ)に対して「私は唯一無二の実在する人間である」と証明できます。また、パスポートの本人確認情報を追加している場合は、「私は18歳以上である」や「私は米国市民である」といったことを証明することも可能です。証明は組み合わせることもできます。たとえば「AIではなく一人の人間であり、18歳以上である」という証明を作れば、それ以外の情報を明かさずに提示することができます。

AIが急速に進化し、人間を非常にリアルに模倣できるようになってきたことから、多くの専門家は、人間であることの証明が今後ほとんどのテクノロジープラットフォームにとって重要なインフラになると指摘しています。例えば、Microsoft社長のブラッド・スミス氏は、AIに関する最大の懸念としてディープフェイクを挙げ、本物のコンテンツと偽物のコンテンツを見分けるための新たな安全対策の必要性を訴えています。 NSA、FBI、CISAの共同報告では、ディープフェイクのようなAI生成コンテンツによる脅威が「指数関数的に増加している」と警告し、現行のセキュリティ体制にとって課題が深刻化していると指摘しています。Gartnerのアナリストも、2028年までに求職者の4人に1人が架空の人物になると予測しています。動画や音声でのやり取り、各種の証明にディープフェイク技術が使われ、ビデオ面接などの従来型の不正検知が通用しなくなるとしています。

こうした背景から、人間であることの証明の重要性は、さまざまな業界で急速に認識されつつあります。例えば、ソーシャルメディアやメッセージングアプリではボットによる問題が深刻化しています。銀行や金融分野ではディープフェイクを使った詐欺が増加しており、不正検知や金融コンプライアンスへの対応がますます難しくなっています。ゲームやエンターテインメント業界では、年齢確認やAIによるなりすましへの対応が課題となっています。  さらに、高等教育機関や政府サービスにおいても、AIを利用した不正によって大きな金銭的損失が発生しています。将来的には、AIエージェントに権限を委任する際にも、World IDのような技術が必要になる可能性があります。

信頼性の高い人間であることの証明を求めるアプリケーションは、World IDを本日から導入でき、多くがすでに導入済み、または現在導入中です。例えば次のような事例があります。

  • Razerは、eスポーツ業界のリーディング企業の一つであり、実在する人間のプレイヤーを認証するためにWorld IDを導入しています。マルチプレイヤーゲーム「TokyoBEAST」では、World IDによって、人間同士が対戦していることを確認できるようになり、AIとの対戦ではないことを保証します。
  • Match Groupは、マッチングアプリ業界のパイオニア企業であり、Tinder、Hinge、Plenty of FishなどのプラットフォームでWorld IDの試験導入を進めています。 World IDにより、ユーザーはやり取りの相手が実在する人間であることを確認でき、オンライン上のコミュニケーションに対する信頼性が高まります。また、スムーズな年齢確認にも役立ちます。
  • 世界最大級のeコマースプラットフォームの一つであるShopifyでは、出店者がオンラインストアにWorld IDを組み込む取り組みを進めています。これにより、ボット対策を施したプロモーションの実施、認証済みユーザー限定の商品販売、不正検知の強化などが可能になり、より信頼性の高い購買体験を提供できます。
  • 日本最大級の広告代理店である博報堂は、World IDを活用して不正のない広告ネットワークの構築を計画しています。これにより、「クリックファーム」と呼ばれる不正なクリックではなく、実在する人々へ広告を効率的に届けることを目指しています。

World IDプロトコルの長期的な持続可能性

World IDプロトコルを支える経済的な仕組みを説明する前に、その所有構造とガバナンス体制について整理しておきます。 World財団はWorldプロジェクトのサポーターとして、プロジェクトが自律的に運営できるようになるまでコミュニティの支援と成長を担っています。 World財団は、World IDプロトコル、Orb、そしてWorld Chainに関する知的財産を保有しています。また、World財団はWorldコミュニティに割り当てられているWorldcoin(WLD)トークン全体の75%を管理しています。これらのトークンは、(a)ユーザー向けトークン、(b)ネットワーク運用、(c)エコシステムの構築の3つの目的に配分されています(詳細についてはこちらのブログ記事をご覧ください)。

Worldプロジェクトは、拡大を続けるエコシステムによって支えられています。プロジェクトの初期開発を担ったTools for Humanityは、現在最大のサービスプロバイダーであり、World Network上で最初のウォレットアプリであるWorld Appの知的財産を保有しています。

World財団は、ミッションとして、エコシステムの段階的な分散化と、プロジェクトの自律的な運営を目指しています。 World IDプロトコルの文脈では、主に次の2つの要素が重要になります。

  • 認証情報の発行者へのインセンティブ:発行者が十分な収益を得られる仕組みを整え、証明の発行と維持を継続する動機づけとします。
  • プロトコルの持続可能性:プロトコル自体が長期的に運営できるよう、十分な収益を生み出す仕組みを構築します。

こうした目標を実現するため、World財団はWorld ID手数料の導入を予定しています。

World ID手数料:ユーザーではなくアプリケーションに課金

World ID手数料はアプリケーションに対して課金され、プロトコルを利用するエンドユーザーにとっては引き続き無料のままとなります。

World IDの価値は、アプリケーションがこれを統合することで既存サービスを強化したり、まったく新しいサービスを実現したりする際に発揮されます。これまで実現が難しかった新しいビジネスモデルの創出にもつながります。その一例がAquaミニアプリです。このアプリはWorld IDを活用し、認証済みの人間によるオンライン上のエンゲージメントのみを測定します。これにより、コンテンツクリエイターはボットの活動ではなく、実際のユーザーの行動に基づいて報酬を得ることができます。このような理由から、World IDのサービスを利用するアプリケーションに対してプロトコルが課金を行うことは自然な仕組みと言えます。アプリケーションは、組み込む機能やサービスに対して料金を支払うことが一般的であり、World IDが提供する価値も受け入れられやすいと考えられます。この仕組みにより、アプリケーションによって生み出される利益の一部が、本人確認情報発行者やプロトコルへ還元されます。

World財団は現在、アプリケーションに対してWorld ID手数料を課すために必要となるプロトコルの変更を設計しています。これらの技術的な変更の詳細については、2025年第3四半期までに公表される予定です。

World ID手数料の仕組み

World ID手数料は、次の2つの要素で構成されます。

  1. 認証情報の利用料:各発行者は、自身が発行する認証情報に利用料を設定し、その収益を受け取ることができます。発行者には、Orb認証情報を発行するWorld財団や、独自の証明を発行する企業・政府機関などが含まれます。これにより、認証情報の発行者が証明を作成し、維持し続ける動機が生まれます。
  2. プロトコル手数料:プロトコル側では基本となる手数料を設定し、さらに本人確認情報の手数料に少額の追加料金を上乗せします。これにより、プロトコルが自律的に運営できるだけの収益を確保することを目指します。

アプリケーション側で必要となるWorld ID手数料は、本人確認情報手数料とプロトコル手数料を合算した金額です。 World ID手数料は、固有のIDで識別される各アプリケーションが、World IDの証明をリクエストする際に発生します。

手数料の支払いは、プロトコルレベルで強制されます。これは、将来のWorld IDアーキテクチャで採用される「プライベートステートブロックチェーン」によって実現される機能の一つです(使用されている暗号技術の背景については、技術資料をご参照ください)。簡単に言うと、プライベートステート・ブロックチェーンは誰にも中身を見られずに状態を更新でき、かつパーミッションレスで利用できるブロックチェーンの仕組みです。この仕組みによって、World IDプロトコルではさまざまな機能が実現されます。たとえば、World IDのリカバリー機能や、複数ウォレットでの利用などが可能になります。重要な点として、認証済みユーザーごとに紐づくアプリケーションの状態の一部も、このブロックチェーン上で管理されます。ユーザーが証明を生成するためには、まずプライベートステートブロックチェーン上の状態変更を示すレシートを取得する必要があります。World IDスマートコントラクトは、このレシートを発行する前に、必要な手数料が支払われているかどうかをプログラムによって確認します。この仕組みにより、アプリケーションはWorld ID手数料を回避することができません。なぜなら、ブロックチェーンの状態を外部から観測することができず、手数料の支払いを伴わない形で証明を生成することが不可能になるからです。

World ID手数料の仕組みの概要を示した図。Worldエコシステムにおける手数料の構成と、その流れを示しています。

図1:想定されるWorld ID手数料の実装概要

図1は、World ID手数料の仕組みの全体像を示したものです。ここでは、すでに本人確認情報の発行者に登録を完了し、その本人確認情報がプライベートステートブロックチェーンに登録されているユーザーを例に説明します。 World ID手数料は、以下の流れで処理されます。(1) World IDを組み込んだアプリケーションが、ユーザーに対して証明(例:そのユーザーが実在する人間であることの証明)をリクエストします。 (2) ユーザーは、World AppなどのWorld ID対応アプリを通じて、そのリクエストをプライベートステートブロックチェーン上のWorld IDスマートコントラクトで実行します。 (3) スマートコントラクトは、リクエストを行ったアプリケーションに紐づくウォレットから、WLDによる手数料の支払いを自動的に実行します。 (4) 支払われた手数料のうち、本人確認情報の手数料は本人確認情報の発行者のウォレットへ、プロトコル手数料はプロトコルのウォレットへ送金されます。 (5) World IDスマートコントラクトは、自身の状態を更新します。 (6) World IDスマートコントラクトは、状態変更を示すレシートをユーザーへ送信します。 (7) ユーザーのアプリがWorld IDの証明を生成し、それをアプリケーションへ送信します。

World IDスマートコントラクトでは、手数料はWLDで支払う必要があります。そのため、アプリケーションはプライベートステートブロックチェーン上のウォレットに、あらかじめWLDを用意しておく必要があります。 Web3ネイティブなアプリケーションの場合は、ブロックチェーン上で直接ウォレットにWLDを入金して準備することができます。一方で、Web2プラットフォームのようなアプリの場合は、ウォレットへのチャージを代行する外部サービスを利用し、手数料を法定通貨で支払うこともできます。いずれの方法であっても、最終的に手数料の支払いにはWLDトークンが使用されます。

料金設定の仕組み

図1では、World IDの証明が生成されるたびにWorld ID手数料が発生することを前提としています。しかし実際には、各本人確認情報の発行者が、図1で示したアーキテクチャと互換性のある任意の料金設定の仕組みを選択することができます。料金設定の仕組みは、プライベートステートブロックチェーン上のスマートコントラクトとして実装されるため、さまざまな形態を採用することが可能です。たとえば、次のような方法が考えられます。

  • 証明ごとの課金:World IDの証明が生成されるたびに手数料を課す方式です。
  • 月間アクティブユーザーごとの課金:アプリIDごとの月間アクティブユーザー数に応じて手数料を課す方式です。各ユーザーについて、特定の月に初めて証明がリクエストされたタイミングで手数料が発生します。計算処理はプライベートステートブロックチェーン内で行われるため、ユーザーの本人確認情報や個人を特定する情報を公開することなく、このような料金モデルを実装できます。
  • 無料枠:最初の1,000ユーザー、または最初の1,000件の証明を無料とすることができます。
  • ボリュームディスカウント:ユーザー数や証明数が増えるほど、段階的に手数料を引き下げることができます。
  • 特定の用途への割引:発行者は、NGOなど特定の用途に対して割引を適用したり、証明を無償で提供したりすることもできます。
  • 経済価値に応じた手数料:本人確認情報の発行者は、異なる手数料水準の複数の証明バリエーションを提供することもできます。一部の証明では、あえて保証レベルを低く設定することで、アプリケーションが用途に応じて最適な証明レベルを選択できるようにすることも可能です。

複数の料金モデルが考えられますが、多くのアプリケーションでは、月間アクティブユーザーごとの課金方式を選択する可能性が高いと考えられます。この方式であれば、World IDの導入によってユーザー1人あたり月間でどれだけの価値が生まれているか(例:ARPUの向上など)と、支払う手数料を比較しやすくなるためです。プロトコル手数料のうちベース手数料の部分についても、ガバナンスによって適切な料金設定の仕組みが決定される予定です。

今後のWorld IDプロトコルでは、証明の「連結」にも対応する予定です。たとえば、人間証明の認証情報とパスポートに基づく年齢の証明を組み合わせることができます。利用料は、World IDで証明を行う際に必要となる証明の組み合わせによって変動する可能性があります。例えば、「人間であることの証明」のみの場合よりも、「人間であることの証明+年齢証明」の場合のほうが、手数料が高く設定されることが考えられます。

手数料の用途

本人確認情報の手数料の使い道については、各本人確認情報の発行者がそれぞれの判断で決定します。一方、プロトコル手数料の配分については、当初はWorld財団が管理します。今後ガバナンスの分散化が進むにつれて、この役割はWorldコミュニティへと移行していく予定です。コミュニティは、手数料の一部をネットワークの継続的な成長のために活用することができます。たとえば、オペレーターの支援やUser Tokenの資金に充てることが考えられます。また、手数料の一部をバーンすることも考えられます。 World IDプロトコルが成長し、参加者、アプリケーション、そしてWorld ID証明の数が増えるにつれて、発生する手数料も増加します。こうして生まれた手数料がエコシステムへ再投資されることで、さらなる成長を生み出し、ネットワーク全体の発展を促す循環的な成長メカニズムが形成されていきます。

今後の展望

World財団は現在、World ID手数料を導入するために必要なプロトコル変更の開発を進めています。これらの作業は2025年第3四半期までに完了し、手数料メカニズムを検証するための最初のテストを実施する予定です。 World財団は、World IDの利用料に関する方針を早い段階で示すことが重要だと考えています。エコシステムに参加する他の事業者が証明を発行し、維持し続ける動機となり、プロトコルが自立して運営できることを示せるためです。

World財団はWorld ID手数料の導入準備を進める一方で、引き続きWorld Networkの成長を最優先事項として取り組んでいます。また、ミニアプリ開発者、本人確認情報の発行者、そしてWorld IDを統合するアプリケーションのコミュニティを支援するため、エコシステム助成金の提供も継続していきます。

免責事項

本投稿は情報提供のみを目的としたものであり、いかなるトークンまたはデジタル資産の販売の提案、または購入の勧誘を行うものではありません。 Tools for HumanityおよびWorl財団は投資助言を提供しておらず、WLDを含むいかなるデジタル資産についても、将来の価値やパフォーマンスを保証するものではありません。

この記事には12か月以上前の情報が含まれているため、内容が最新でない可能性があります。プロジェクトに関する最新情報は、world.org/blogをご覧ください。

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